「少しだけ」で大丈夫。多忙でも挫折しない趣味の継続術
忙しい毎日の中で「趣味を楽しみたい」という気持ちに寄り添う
日々の仕事に追われ、帰宅すれば疲れが待っている。そんな状況でも、「何か自分のための時間が欲しい」「心から楽しめる趣味を持ちたい」と感じることは自然なことです。しかし、いざ趣味を始めようと思っても、「まとまった時間がない」「完璧にできる自信がない」といった理由で、なかなか一歩を踏み出せない、あるいは始めてもすぐに挫折してしまうという方も少なくありません。
多忙を極める中で趣味の時間を確保するためには、時間管理のテクニックも重要ですが、それ以上に「趣味との向き合い方」や「心構え」が鍵となります。特に、真面目で責任感が強い方ほど、「どうせやるならちゃんとやりたい」「中途半端は嫌だ」と考えがちですが、その完璧主義が、かえって趣味を楽しむハードルを上げてしまっている場合があるのです。
この記事では、忙しい中でも趣味を無理なく、そして長く続けるために、完璧主義を手放す考え方と、すぐにでも実践できる具体的な方法をご紹介します。
なぜ忙しい人ほど完璧主義になり、趣味が続かないのか
多忙なビジネスパーソン、特に責任ある立場にいる方は、仕事において常に高い質を求められ、結果を出すことに慣れています。この仕事における成功体験が、趣味の世界にも無意識のうちに持ち込まれることがあります。
- 「やると決めたら徹底的に」という仕事の習慣: 仕事で成果を出すためには、計画的に、徹底的に取り組むことが求められます。この姿勢が趣味にも及び、「毎日必ず〇時間やる」「完璧な作品を完成させる」といった目標設定につながりやすいのです。
- 時間がないことへの焦り: 限られた時間しかない中で取り組むからこそ、「この短い時間で最大限の効果を上げたい」「無駄にしたくない」という気持ちが強くなり、結果として自分に高い要求を課してしまいます。
- 「どうせ中途半端になるならやらない方がまし」という思考: 時間がない現状を考えると、「どうせ完璧にはできないから、始めない方が失望しなくて済む」と考えてしまい、行動そのものを諦めてしまうことがあります。
しかし、趣味の本来の目的は「楽しむこと」「リフレッシュすること」にあります。仕事のように「成果」や「効率」を最優先する必要はありません。この目的の違いを理解することが、完璧主義を手放す第一歩となります。
解決策:完璧主義を手放し、「少しだけ」を許可するマインドセット
忙しい中で趣味を継続するためには、「完璧である必要はない」「少しだけでも十分価値がある」と自分に許可を与えることが重要です。
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趣味の目的を再定義する: 趣味の目的は、単に「何かを完成させること」や「スキルを向上させること」だけではありません。大切なのは、その活動を通じて「心が満たされること」「リフレッシュできること」「日々のストレスから解放されること」です。この「楽しむこと」「心地よさを感じること」に焦点を当て直しましょう。
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「少しだけ」の価値を認める: たとえ10分でも、15分でも、趣味のために使った時間は、あなたの心を豊かにする貴重な時間です。たとえ途中で終わっても、目標まで到達しなくても、その「少しだけ」取り組んだ自分を認め、肯定的に捉えましょう。「今日はこれだけできた」という小さな成功体験を積み重ねることが、継続のエネルギーになります。
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成果ではなくプロセスを楽しむ: 完璧な作品や目に見える成果を目指すのではなく、趣味に取り組んでいる「その過程」を楽しむことに意識を向けましょう。例えば、読書なら「難しい本を読破する」ことより「この文章表現面白いな」と感じること、絵を描くことなら「プロ並みの絵を描く」ことより「色を塗っている時の感覚を楽しむ」ことなどです。
実践編:「少しだけ」でも趣味を楽しむ具体的な方法
完璧主義を手放すマインドセットに加え、具体的な行動の工夫を取り入れることで、忙しい中でも趣味の時間を確保しやすくなります。
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時間を極小単位で区切る: 「〇時間確保しないと」と考えるのではなく、「今日のスキマ時間に15分だけ」「寝る前に10分だけ」のように、短時間から始めます。タイマーを活用するのも有効です。時間が来たら潔く中断する、というルールを自分に課してみましょう。
- 例:読書
- 「この本を読み終える」ではなく「今日は15分だけ読む」と決める。
- 通勤電車の中、休憩時間など、細切れの時間を使う。
- 例:楽器練習
- 「1曲弾けるようにする」ではなく「今日は指の練習を5分だけ」と決める。
- 楽譜を開く、楽器を出す、音を出す、という小さなステップに分解する。
- 例:読書
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タスクを細分化し、「今日できる一番簡単なこと」から始める: 趣味の活動を、さらに小さなステップに分解します。そして、その日の気分や状況に合わせて、一番ハードルの低いステップだけを選んで取り組みます。
- 例:ブログを書く
- 「記事を書き上げる」ではなく「今日はテーマだけ考える」「構成だけメモする」「見出しだけ作る」など。
- 疲れている日は「過去に書いた記事を見返す」だけでも良い。
- 例:ガーデニング
- 「庭の手入れを完璧にする」ではなく「枯れた葉を2、3枚取る」「新しい苗に水をやる」など。
- 「今日は植物を眺めるだけ」でも、趣味との繋がりを持つことになります。
- 例:ブログを書く
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「〇〇であるべき」という理想を捨てる: 「趣味はこうあるべき」「こんなに時間をかけるべき」といった固定観念を手放しましょう。例えば、「料理は凝ったものを作るべき」ではなく「冷蔵庫の残り物で一品作るだけでも、料理という趣味を楽しんだことになる」と考える柔軟さを持つことが大切です。
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記録をつけて「できたこと」を可視化する: 手帳やスマートフォンのアプリなどに、その日趣味に費やした時間や内容を簡単に記録します。短時間でも「〇分できた」「〇〇ができた」という記録は、継続のモチベーションにつながります。「何もできなかった」と感じる日があっても、記録を見ることで「先週はこれだけできた」と振り返ることができ、自己肯定感を保ちやすくなります。
「少しだけ」でも楽しめる手軽な趣味アイデア
忙しい日々の中でも「少しだけ」時間を見つけて楽しめる、比較的手軽に始められる趣味のアイデアをいくつかご紹介します。これらは準備や片付けに時間がかからず、短時間でも満足感を得やすいものが中心です。
- 短時間読書: 文庫本や新書を持ち歩き、電車の中や休憩時間、寝る前など、まとまった時間が取れない時でも数ページだけ読み進める。
- 音楽鑑賞: 移動中や家事をしながら、集中して聞く時間がない時でも、好きな音楽をBGMとして流す。気に入った曲の一部分だけを繰り返し聞くのも良いでしょう。
- 短時間エクササイズ/ストレッチ: 湯船に浸かりながら、あるいはテレビを見ながらなど、「ながら時間」やスキマ時間に5分程度のストレッチや簡単な筋トレを取り入れる。
- デジタル写真整理: スマートフォンで撮りためた写真を、スキマ時間に数枚ずつ整理したり、気に入ったものを選んでクラウドにバックアップしたりする。
- オーディオブック/ポッドキャスト: 通勤時間や移動中に、耳で聴く読書や興味のある分野の情報を得る。両手が空くため、他の作業をしながらでも楽しめます。
- ペン字/写経: ノートとペンさえあれば、机に向かって数分でも取り組めます。集中することでリフレッシュ効果も期待できます。
- 塗り絵: 最近は大人向けの塗り絵も多く、無心で色を塗る作業はストレス解消になります。短い時間で区切りやすいため、「今日はこの部分だけ」と決めやすいのも利点です。
これらのアイデアはあくまで一例です。ご自身の興味やライフスタイルに合わせて、無理なく「少しだけ」取り組めるものを見つけてみてください。
趣味を続けるための心構えと継続のコツ
「少しだけ」を実践する中でも、続けるために意識しておきたい心構えやコツがあります。
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完璧を求めず、楽しかった経験を振り返る: 「〇〇できなかった」と反省するのではなく、「〇〇をして楽しかったな」「少しでも心が休まったな」というポジティブな感情に焦点を当てましょう。楽しかった記憶が、次の「少しだけ」への原動力になります。
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環境を整える: 趣味に使う道具や本などを、すぐに手に取れる場所に置いておくことも有効です。「さあやるぞ!」と意気込まなくても、目に入れば自然と「少しだけやってみようかな」という気持ちになりやすくなります。
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他人との比較をやめる: SNSなどで他の人の活動を見て、「あの人はこんなにすごいのに自分は…」と落ち込む必要はありません。趣味に費やせる時間も、取り組み方も人それぞれです。あなたの「少しだけ」は、あなた自身の心を満たすための大切な時間です。他人と比較せず、自分のペースを大切にしましょう。
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できなかった日があっても気にしない: 忙しすぎて全く時間が取れない日があっても、自分を責めないでください。誰にでもそういう日はあります。「今日は無理だったけれど、また明日か明後日、少しだけやってみよう」と気楽に考えましょう。大切なのは、完全に諦めないことです。
まとめ:少しずつ、気楽に、長く楽しむ
多忙な日々の中で趣味の時間を持つことは、心身のリフレッシュや自己肯定感の向上につながり、結果として仕事や日常生活にも良い影響を与えます。しかし、完璧を目指しすぎると、かえってそのハードルの高さが負担となり、継続を難しくしてしまいます。
「少しだけ」で大丈夫。完璧でなくても良い。趣味は楽しむためにある――。
この考え方を大切に、まずは10分、15分といった短い時間から、あるいは活動の最も簡単なステップから取り組んでみてください。そして、成果ではなく、その過程で感じた楽しさや心地よさに目を向けましょう。
自分に合ったペースで、気楽に、そして長く趣味と向き合うこと。それが、忙しい毎日の中でも心を豊かに保ち、人生を楽しむための秘訣となるはずです。