忙しい人ほど効果あり。「やらないことリスト」作成で趣味時間を確保する実践法
多忙な日々の中で、「趣味の時間が全く取れない」「いつも時間に追われている」と感じる方は少なくないかもしれません。仕事に責任を持つ立場にあると、タスクは増え、時間はいくらあっても足りないように感じられるものです。しかし、もしかしたら、時間は「ない」のではなく、「やっていること」が多すぎるのかもしれません。
時間を生み出す逆転の発想「やらないこと」を決める
一般的な時間管理術では、「いかに効率的にタスクをこなすか」「スキマ時間をどう活用するか」に焦点が当てられがちです。もちろんこれらも重要ですが、根本的に時間を創出するためには、「今、やっていること」を見直し、本当に必要なのか、あるいはもっと効率的な方法があるのかを問う必要があります。
そこで有効なのが、「やらないこと」を意図的に決めるというアプローチです。これは、単にタスクを削減するだけでなく、無意識に行っている時間泥棒的な行動や、完璧主義からくる過剰な作業を手放すことで、物理的・精神的な余裕を生み出す考え方です。
なぜ「やらないこと」を決めるのが難しいのか
「やらないこと」を決めることは、言うほど簡単ではありません。そこにはいくつかの心理的なハードルが存在します。
- 完璧主義: 何事も完璧にこなそうとするあまり、本来不要な工程に時間をかけてしまう傾向があります。
- 義務感・責任感: 「自分がやらなければならない」「断ってはいけない」という強い思い込みが、不要なタスクを引き受ける原因となることがあります。
- 情報過多: スマートフォンやSNSなど、絶えず入ってくる情報に無意識に時間を奪われている状態です。
- 習慣: 特に目的もなく、惰性で行っている日常的な行動(長時間テレビを見る、SNSを延々とスクロールするなど)が、時間を浪費していることに気づきにくい場合があります。
これらのハードルを乗り越えるために、意識的に「やらないこと」をリスト化し、実践するステップを踏むことが有効です。
「やらないことリスト」作成と実践のステップ
「やらないこと」を明確にし、趣味時間を確保するための具体的なステップをご紹介します。
ステップ1: 時間を使っている「やること」を洗い出す
まずは、普段自分が何に時間を使っているかを正直に書き出してみましょう。仕事のタスクはもちろん、通勤時間、会議の時間、メールチェック、休憩時間、SNSの閲覧、家事、育児、付き合いの残業など、平日の時間配分をできるだけ具体的にリストアップします。休日についても同様に洗い出すと良いでしょう。
- 例: 朝のルーティン(ニュースチェック、メール返信)、午前中の会議、資料作成、部下からの相談対応、昼食、午後の業務、定時後のメール対応、付き合いの食事、帰宅後のSNSチェック、テレビ視聴、風呂、就寝準備、など
ステップ2: それらを重要度・緊急度で分類する(簡易版)
書き出した「やること」を、自分にとっての重要度と緊急度で簡単に分類してみます。全てのタスクを厳密に分類する必要はありませんが、大まかに以下の4つのカテゴリに分けて考えると、取捨選択のヒントになります。
- 重要かつ緊急: すぐにやるべき必須タスク(例: 期日が迫った重要な会議資料作成)
- 重要だが緊急でない: 将来のために必要なタスク(例: 自己啓発、健康管理、趣味の時間)
- 重要でないが緊急: 誰かに任せられるタスク(例: 緊急ではない問い合わせへの対応)
- 重要でも緊急でもない: 不要なタスク(例: 無目的のネットサーフィン、付き合いの飲み会でなくても良いもの)
ステップ3: 「やらなくても問題ないこと」を特定する
ステップ2の分類を参考に、特に「重要でも緊急でもない」カテゴリに該当するもの、あるいは「重要でないが緊急」で他人に任せられるものを特定します。さらに、「重要かつ緊急」や「重要だが緊急でない」に見えるタスクの中にも、以下のような「削減できること」が隠れている場合があります。
- 完璧主義による過剰な作業: 80%の完成度で十分なのに、100%を目指して時間をかけすぎている部分はないか。
- 無駄な会議やメール: 本当に参加が必要か、もっと短時間で済ませられないか、定型的なメール返信に時間をかけすぎていないか。
- 断れない付き合い: 必ずしも参加する必要のない会合や飲み会を断る選択肢はないか。
- 惰性的な時間消費: 無意識のSNS閲覧やネットサーフィンなど、代替できる、あるいは削減できる時間はないか。
これらを具体的にリストアップしてみましょう。これが「やらないことリスト」の原案となります。
- 例:
- 必要性が低い社内会議への出席をやめる(代理を立てる)
- 定時後の無駄な情報収集をやめる
- 付き合いで参加していたオンラインゲームをやめる
- 夜間のSNSチェックをやめる(時間を決める)
- 自分でなくてもできる簡単な事務作業をやめる(部下やアシスタントに依頼)
- すべてのメールに即レスすることをやめる(返信時間を決める)
ステップ4: 「やらないことリスト」を作成し、意識する
ステップ3で特定した「やらないこと」を明確なリストとして書き出します。そして、そのリストを常に意識することが重要です。デスクの目につく場所に貼る、スマートフォンのリマインダーに設定するなど、自分にとって効果的な方法でリストを意識する工夫をしましょう。
リストは一度作成したら終わりではありません。定期的に見直し、状況に合わせて更新していくことが大切です。
「やらないこと」を決める実践のコツと心構え
「やらないことリスト」を効果的に実践するためには、いくつかのコツがあります。
- 小さなことから始める: 最初から多くのことを削減しようとすると挫折しやすいため、まずは一つか二つの「やらないこと」から始めてみましょう。効果を実感できれば、次へのモチベーションにつながります。
- 周囲の理解を得る: 仕事や家庭に関わる「やらないこと」を決める場合は、関係者に説明し、理解や協力を求めるとスムーズに進むことが多いです。
- 罪悪感への対処: 特に他人から依頼されたことを断る場合、罪悪感を感じることがあるかもしれません。「すべてを完璧にこなすことは不可能である」「自分の時間を確保することは、長期的に見てより高いパフォーマンスにつながる」と考え方を切り替えることも重要です。
- 生まれた時間の使い方を意識する: 「やらないこと」で生まれた時間を何に使うのかを具体的にイメージすると、リスト作成のモチベーションが高まります。「この時間で趣味の本を読む」「少しだけ音楽を聴く時間にする」など、生まれた時間を趣味に充てる計画を立てましょう。
「やらないこと」を意識的に手放すことで得られるメリットは、単に時間が増えるだけではありません。心に余裕が生まれ、本当に重要なことに集中できるようになるため、仕事の質が向上したり、ストレスが軽減されたりといった効果も期待できます。
生まれた時間で楽しむ手軽な趣味のアイデア
「やらないことリスト」の実践によって生まれた時間は、ぜひ趣味のために活用してください。多忙な中でも短時間で楽しめる趣味の例をいくつかご紹介します。
- 読書: スマートフォンで電子書籍を少し読む、話題の新刊の冒頭部分だけ読むなど、短時間でも楽しめます。
- 音楽鑑賞: 移動中や休憩時間に好きな音楽を数曲聴くだけでも気分転換になります。
- 短時間エクササイズ: 5分程度のストレッチや筋トレ、軽いウォーキングなど、手軽に体を動かすことでリフレッシュできます。
- デジタルアート: タブレットやスマートフォンで簡単なイラストを描く、写真を加工するなど、気軽に創造的な活動ができます。
- 音声コンテンツ: 通勤中や家事をしながら、ポッドキャストやオーディオブックで興味のある分野の情報を得たり、物語を楽しんだりできます。
まとめ
多忙な日々の中で趣味時間を確保するためには、「やること」を効率化するだけでなく、「やらないこと」を意識的に決めるという逆転の発想が非常に有効です。「やらないことリスト」を作成し、実践することは、最初は難しく感じられるかもしれませんが、小さな一歩から始めることで確実に時間を創出できます。
自分にとって本当に大切な時間、つまり趣味を楽しむ時間を確保するために、ぜひ一度、立ち止まって「やらないこと」を見つめ直してみてください。それによって生まれた時間は、きっとあなたの日常に新たな彩りを与えてくれるはずです。